7月17日から全面施行となる改正臓器移植法では、15歳未満の小児からも脳死下での臓器の摘出ができるようになる。現行法に基づく脳死判定基準は6歳以上が対象だ。6歳未満については、別の旧厚生省研究班(班長、竹内一夫・杏林大名誉教授)が00年に公表した基準を踏襲した。
旧研究班は全国の6歳未満の臨床的脳死判定症例139例と、海外の事例などを分析した結果、小児でも脳波や自発呼吸の有無など現行と同じ5項目の検査で脳死を正確に判定できるとした。一方、成長途上にある小児の脳は障害に対して抵抗力が強く、回復する場合もあるため慎重を期す必要があると判断。2回の判定の間隔を多くの症例で24時間以上置いていたことを考慮した。
臓器移植の多い米国では、1歳以上の小児は2回の診察所見を12時間空けて実施している。新基準案をまとめた日下康子・東京慈恵会医科大講師(脳神経外科)は「国際的に見ても厳しい基準で、判定に従えば脳機能が回復することはない」と話す。
新基準案ではデータの少ない生後3カ月未満や、低体温症と区別がつきにくい体温が35度未満の場合は判定対象から除外した。
また研究班は、脳死下での臓器提供者から虐待された児童を除外するマニュアルも公表した。虐待が疑われる特徴的な外傷を記したほか、児童相談所への照会などを求めたチェックリストを活用し、臓器提供の対象にすべきか判断する。
◇高い蘇生力 戸惑う現場
臓器移植委員会ではこれまで、小児の臓器摘出が可能な約300の臓器提供施設に追加される小児専門病院の28施設が公表されたほか、今回、小児脳死判定基準案も公表され、小児脳死移植に向けた準備が進む。だが、医療現場からは小児の脳死判定や臓器摘出への反発や導入に消極的な意見も出ている。
旧厚生省の研究班が作成した小児脳死判定基準に対し01年6月、「実際に脳が二度と回復しない状態(脳死)だったことが確認されておらず、科学的根拠がない」と批判意見をまとめ、基準の再検討を要請した一人の浜辺祐一・東京都立墨東病院救命救急センター部長は「新たに検証や調査を実施した結果であれば別だが、それ以降何もせずに進めてしまうのはおかしい」と厳しく批判している。
昨年10月、臓器提供を行う医療機関を対象にした毎日新聞社のアンケート調査では、15歳未満の小児での脳死下臓器提供について、「対応できる」と答えたのはわずか約4割。「できない」「わからない」が約6割で、その理由を複数回答で尋ねると、「小児の脳死判定は難しい」が約5割で最も多かった。
提供病院などを対象に研究班が昨年9〜10月に実施したアンケート調査でも、小児からの臓器提供は「不可能」が約3割、「どちらとも言えない」が約4割。「小児の脳死判定を行う体制が整っていない」「小児の脳死診断の経験がない」ことなどを理由に挙げた。
横田裕行・日本医科大教授(救急医学)は「提供施設に小児の脳死判定ができる医師らを派遣する支援体制が必要」と話している。
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